「油面」の読み方は「ゆめん」ではなく「あぶらめん」。油にまつわる何か、ユニークな伝説でも存在しているのでしょうか。珍しい名前だけにその由来が気になります。
「油面」は旧地名。現在の目黒区中町1、2丁目と中央町2丁目の一部が、かつて「油面」とよばれていた地区です。今は、小学校、商店街、公園、交差点、バス停などにその名が残ります。
目黒区一帯が農村地帯だった江戸時代、この辺りでは菜種の栽培が盛んに行われていました。閑静な住宅街となった現在では想像できませんが、春になると黄色い菜の花が畑を覆い、人々の気持ちを明るくしていたわけですね。
菜種から絞った菜種油は、芝の増上寺や祐天寺に灯明用として奉納され、それによって租税が免除されていました。そこで、油を納める代わりに租税が免除される村として、この地は「油免」とよばれ、「免」が「面」に転じて、「油面」になったようです。伝説ではなく、租税にまつわる地名だったのですね。
おしゃれなインテリアショップが並ぶ目黒通りから祐天寺方面に延びる「油面地蔵通り」には、その名の通り、お地蔵さまがまつられています。江戸時代から育児の厄除け地蔵尊として、あつく信仰されてきました。菜の花畑にお地蔵さま・・・・・・油面の、のどかな風景が伝わってきます。