権之助坂は、目黒通りの一部で、オフィスビルや商店街が立ち並ぶにぎやかな広い坂道です。坂道を緩やかに下った先に「権之助坂」バス停があります。坂の名は、ゆかりのある人物からきているのでしょうか。「権之助」という人名が、想像をかき立てますね。
江戸時代中期、農村だった目黒に、菅沼権之助という名主(なぬし)がいたそうです。この名主が坂に名を残した人物で、諸説ありますが、由来にまつわる悲しい話が二つ残されています。一つは、苦しい生活をしている村人を見かねた権之助が、幕府に年貢米の軽減を訴えたことが罪に問われたという話です。直訴することは重罪だったため、処刑が決まり、刑場に連れて行かれる権之助はわが家を一目見たいと願って、縛られたままこの坂の上から家を眺めたとか。それ以来、この坂を「権之助坂」と呼ぶようになったといわれています。