東急バス 30周年記念誌 更新版
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6トップインタビューチャージサービス、モバイルPASMO等のサービスが導入されました。バスの位置情報案内の他、withコロナを意識した車内混雑情報提供案内もスタートさせ、より快適にスムーズに乗車いただけるようになりました。 ICカードが普及してきている今、券売機や運賃箱に投資するコストを考えますと、現金とICカードの運賃にメリハリをつけていくことが必要なのではないかという課題提起も重要と考えています。急速に進化するデジタル技術については、お客さまサービスの向上や業務プロセスの高度化に、ぜひ活用していきたいです。――ITを使って交通手段による移動をシームレスに結びつけるサービス「MaaS(マース:mobility as a serviceの略語)」が注目されていますね。 2019年に、東急(株)が横浜市と進める「次世代郊外まちづくり」の取り組みの一つとして「郊外型MaaS実証実験」を行うこととなり、観光バスを通勤バスとして運行する「ハイグレード通勤バス」の運行や、スマートフォンのアプリで予約してワゴンタイプの自動車に乗車できる「オンデマンド輸送運行」に協力しました。さらに、2021年には、withコロナにおける快適な通勤の実現を目指す東急線沿線型MaaS「DENTO」の実証実験の一環として、バス車内で仕事をしながら目的地まで過ごす「動くシェアオフィス」をコンセプトとした「サテライトビズライナー」の運行を行いました。 現在、習い事事業者と協力して、AIオンデマンドバスを使い児童を送迎する取り組みも模索しています。数種の習い事事業者が共同で運行することで、送迎で生じる渋滞や違法駐車の緩和だけでなく、自家用車の利用減による温室効果ガスの排出量減少も期待できるものです。 今後も、さらなる移動ニーズを掘り起こし、MaaSの展開につなげていきたいと考えています。――「安全」に対する取り組みにも、ITは生かされていますか。 はい、もちろんです。 「安全」「安心」はすべてに優先される。―これは「安全方針」の最初に定める当社事業の根幹です。 事故防止のために、安全に関わる設備投資はコロナ禍においても止めることなく継続しています。例えば、新しく入れ替えたばかりの「ドライブレコーダー.一体型デジタルタコグラフ」は、画像データのインターネットによる送信が可能になり早い段階で状況解析ができますし、運転士の具合が悪くなったら自――ビジネスモデルの変革を進めるために具体的に動き出されていることはありますか。 2021年4月に組織改正を行い、社長直轄の事業変革推進室を新たに設置しました。「コスト構造の転換」と「新収益源の創出」を両輪として会社を立て直し、さらに持続的な成長を遂げるため、小さなアイデアでも芽を摘まずに、あらゆる可能性にチャレンジしています。 まず、地域のお客さまの満足度を向上させるために「何ができるのか」「どうすればできるのか」を常に考え、地域と密接に関わりながらアンテナを広げていくことが大切だと考えています。 食品製造販売店の食品を駅近くの店舗で販売するために、路線バスに車載して輸送する「貨客混載事業」の実証実験なども進めていますが、人流・物流どちらでも「移動するときには東急バスに相談してみよう」とお客さまに思っていただけるようになりたいですね。――従業員一人一人が地域に寄り添う気持ちを持ち続けることで、ビジネスの種が見つかるということですね。 一つの事例として、小学校・中学校での交通安全教室の実施があります。校庭にバスを乗り入れ、子どもたちに実際に運転席に座ってもらって、バスにはこんなに見えにくいところ(死角)があるということをお話ししたりします。まだバスに乗ったことのないお子さんもいらっしゃるので、バスに触れて親しんでいただけるいいきっかけにもなっています。 また、当社の運転士採用は中途採用が多いのですが、おのおのが前職での経験や免許・資格などを所持しています。かつて自動車教習所の教官であった従業員による「普通自動車ペーパードライバー教習」は、地域の方に「バスのプロドライバーに近所で丁寧な指導をしてもらえる」と、大変ご好評をいただいています。 従業員は貴重な財産です。現場の意見をすくい上げ生かすことで、新しいビジネスモデルに結びつく可能性は広がっていると思います。そして同時に、従業員に「社会に貢献している」という誇りをもって仕事をしてほしいと考えています。――少し話は変わりますが、急速に進化するITの活用について、どうお考えですか。 2007年に交通系ICカードPASMOが誕生してから、この10年余りの間に、各種ICカードの相互利用、乗車時オート50年、100年先もお客さまに愛される東急バスになるために、新たな変革に挑戦し続けていきたいと考えています。

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