東急バス 30周年記念誌 更新版
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4トップインタビュー東急バス株式会社 代表取締役社長株式会社東急トランセ 代表取締役社長中枢を担う会社へと変革を図ることが、生き残るために必要と考えるからです。――事業構造を転換させるという決意、強いお気持ちが伝わってきます。そのお話を詳しく伺う前に、まず30年を振り返っていただき、特に印象深い出来事をお聞かせください。 2011年3月に起きた東日本大震災の時、鉄道が止まり、本社近くの玉川通りを歩いて帰宅しようとするたくさんの人の流れができていました。公共交通に携わるものとして忘れられない光景です。 当時、私は営業部長として運行全般に関する指揮を執る立場にありました。鉄道の復旧が遅れる中で、柔軟に対応できるバスの特性を生かそうと、各営業所と連携を取りながら必要な場所に予備車両を充てるなどの手配をして、少しでもバスの役割を果たしたいという強い思いで業務に当たりました。しかし、その後、燃料確保が難航し、一部路線の運休や減便をせざるを得ませんでした。まさに「油断」という言葉を思い知り、有事が起こった時の対応を考える貴重な経験であったと思います。他事業者において営業所建物が地震の被害に遭い、路線バス車内を臨時営業所として活用した事例報告から、翌年、非常時に駐車中のバスから100Vの電気を供給できるよう、インバーター発電機を全営業所に配置しました。 2011年12月に、私は東急バスを離れて、震災による津波の――創立30周年、おめでとうございます。節目の年に社長に就任された今のお気持ちをお聞かせください。  当時の東京急行電鉄自動車部から東急バスとして分社化する際は、創立メンバーのひとりとして人事労務を担当し、1998年の東急トランセの設立にも関わりました。その後、約10年間運輸の業務に携わった後、2011年に一旦東急バスから離れていた私が、30年の節目の年に社長としてに戻ってきたということに、ひとつの「ご縁」を感じています。 前任の山口社長もお話されていたことですが、「企業寿命30年」という説があり、国税庁がまとめたデータでは企業が30年以上存続する確率は0.1%以下とのこと。それ以上続いている会社は、さまざまな変革をして会社を継続させているのです。30周年を「第二の創業」と位置付け、分社の時と同じくらいに、もう一度思い切った改革をやらなければ次の30年はないと思っています。 創立時から「日本一のバス会社をめざそう!」というスローガンのもと一致団結して各セクションで目標の達成に努め、成長を遂げてきました。私は、次のステップとして、これから「世界一のモビリティ・カンパニー」を目指してチャレンジしていきたいと思っています。バスという既成概念にとらわれず、輸送に関する全ての事業に裾野を広げ、エリア内の移動サービスのTOP INTERVIEW代表取締役社長 古川卓に聞く 東急バスのこれまで、現在、そして未来古川 卓「バス」の既成概念を変革し、世界一のモビリティ·カンパニーへ

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