東急バス 20周年記念誌
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5聞き手 ㈱ぽると出版 バスラマ編集長 和田由貴夫しも“満点”ではないかもしれませんが,当社ではここ10年ほど,IT技術を駆使し,行政や警察のご協力を得ながらバス運行の信頼性を高める施策を進めており,その成果は表れつつあります。具体的にはお客さま自身がバスの走行位置等を確認できる﹁東急バスナビ﹂の導入や,バスカメラシステムによる違法駐車対策などです。道路交通法の改正による路上駐車の減少も手伝い,ダイヤの見直しも並行して行うことで,渋滞が多い地域でも大幅な遅延等は減り,定時性の維持を含め改善されつつあります。また,遅延に関するお客さまからのご意見も減少傾向にあり,改善を実感していただけているものと認識しています。 こうした走行環境改善を背景に,新たなニーズを掘り起こすための新路線の開設を進めています。本年11月から,朝の通勤を快適に活用していただく手段の一つとして通勤高速バス﹁TOKYU E‐Liner﹂を田園都市線沿線の虹が丘(川崎市麻生区)・美しが丘(横浜市青葉区)などの地域から渋谷駅に向け開業する予定です。当社にとって新形態の路線で,このようなサービスを提供することで,沿線価値向上につながるものと考えています。 一方,交通事情の変化によりお客さまが減少した路線は,精査の上,やむを得ず路線の再編成や廃止を実施させていただくこともあります。2008(平成20)年,横浜市営地下鉄グリーンラインの開業により,港北ニュータウンを中心に大幅な路線再編成を行いました。その後も東急沿線の街ごとの人口推移に応じたバス需要動向を踏まえ,新たな方策を常に検討しており,沿線が﹁選ばれる街﹂となる上でのバスの新たな役割を追求している最中であります。 本年度,おかげさまで20周年を迎えられましたので,お客さまへ感謝の気持ちを込め,記念復刻塗装車両の運行やガイドブックの発売,感謝イベントの開催などを実施いたします。お客さまにもお楽しみいただけますと幸いです。 これからの将来に向け東急バス・東急トランセが行うべきことは,﹁お客さまに対し何ができるか?﹂ということを追求し,具現化することです。﹁住みたい街,日本一﹂の実現のためにも,﹁東急沿線のお客さまが快適に移動できる手段を提供していくこと﹂が必要だと思います。20周年という節目に原点に立ち返り,普遍的な目的を再認識した上で,進むべき道を明確にする必要があると考え,10年後へのビジョンを策定しました。 ﹁地域の足となり,暮らしのいろいろをつなぐ会社になります﹂をビジョンとし,実現に向け﹁1.連携と多様化により新たな価値を創造します﹂﹁2.運行品質を高めます﹂﹁3.実現する力を持つ組織になります﹂を概要とした,3つの事業戦略を立てています。今後20年,30年先も企業として永続するため,また,街のインフラとしてお客さま・地域社会やグループに貢献するために,ビジョンの実現に向け力を注いでいきたいと思います。 2025(平成37)年に東急沿線の生産年齢人口がピークを迎え,経営環境も変化し続けています。羽田の国際化,24時間化に伴う空港アクセスの充実や,鉄道線との全接続や終夜運行の実現可能性の追求など,様々な角度から沿線の移動を担うことで,隙のない路線網を目指していきます。また,他社との連携,ITの更なる活用,シニアビジネスなどによるエリア輸送の深化を追求することも大切だと認識しています。 これらの実現には,モチベーションと帰属意識が高く,かつ個々の能力を仕事で発揮できる従業員が多く在籍することが必要です。 ﹁従業員の一体感を醸成し,個々の能力を最大限引き出せる会社﹂﹁従業員が満足して働ける会社﹂になれるよう,組織風土の改革も,一歩ずつ取り組んでゆくべき課題だと心得ています。 ひとつ一つこれらを実現し,利便性の高いバスのサービスを提供することで,お客さまも当社もお互いが利益を享受できる関係となり,本当の意味で﹁日本一のバス会社﹂と呼ばれるように努力を続けていきたいと思います。東急バスの普遍的な目的をビジョンに託す名実ともに﹁日本一のバス会社﹂に向かってバス会社﹂を目指す

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