東急バス 20周年記念誌
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バス全体の需要減少が著しくなると,収支改善はさらに厳しくなり,1994(平成6)年には観光バスセンターを廃止し,大橋営業所下馬観光支所とし管理コストを見直した。更に高津営業所の一部門へと移管した後の2003(平成15)年2月,東急トランセへ貸切事業の譲渡を行った。 東急トランセでは選抜された8名のSPで貸切事業をスタートさせた。新たに貸切のSPマニュアルを作成し,東急バスで観光バス経験のある運転士を指導役に迎え,運転技術からサービスまでの厳しい研修を行い,短期間で立派な観光バス運転士を育てた。 また観光バス事業は1年の中で稼働率が大きく変動する事業であるため,観光バスの需要がない時は,一般の路線バスに乗務し効率化を図るとともに,バスガイドについても,お客さまの要望があった場合は派遣ガイドを依頼し,コスト削減に努めた。その結果,事業を譲渡されてから段階的に車両代替などを行ったため,数年間は営業段階で利益を計上することはできなかったものの,車両耐用年数の12年で考えれば平年度ベースでは利益を計上できる体質とし,減価償却費負担が減少してきた2008(平成20)年以降は,財務決算上でも安定的に営業利益を計上している。 なお東急トランセでは貸切事業の免許を新たに取得したことから,乗合事業の受委託とともに貸切事業の受委託も進み,淡島営業所で東急百貨店の送迎バスである﹁シティシャトル﹂の運行を行っているほか,東急バス高津営業所で行っていた契約輸送も,東急トランセ高津営業所として運行を引き継いでいる。 2006(平成18)年には事業部制を導入するとともに,併せてグループ成長戦略の一つである﹁エリア戦略の深化﹂を進めた。安全マネジメント体制の強化を図るため﹁エリア統括長﹂を新設し,営業所を3つのグループに分け,営業所の枠を超えた危機管理体制の構築や情報共有を行い,リスク管理の強化を図った。エリア統括長は,安全向上策をはじめとした様々な場面で営業所の意見を吸い上げ,本社とのパイプ役として活躍した。5年間﹁エリア統括長制度﹂を取り入れたことで,現業長のレベルアップや他営業所との連携などの効果がみられたことから,2011年6月の組織改正時に,目的は果たされたと判断し廃止した。 株式会社東急バスサポートは,名前のとおりバス事業をサポートする役割を担い,2002(平成14)年7月に設立し10月より営業を開始した。同社は,今後の雇用形態の多様化やオペレーションのコスト低減を実現するために設立された。 当初は,東急バスの案内所業務の運営を引き継ぐ形でスタートした(渋谷駅等の案内所業務は,分社以前より東急弘潤会に委託していたが,2002年3月で同社への委託が終了した)。将来的には営業部門の外注化も含め展開することを視野に入れており,その背景から,2003(平成15)年9月より,停留所清掃業務の受委託も行うこととなった。 2009(平成21)年8月,管理部門の効率化の一環として,東急バスサポートへ委託していた案内所業務,停留所清掃業務の委託を解除し,直接運営に変更した。これは東急バスにおいて,乗務員にとどまらず,工場員や事務職においても定年再雇用者の短時間勤務など多様な雇用形態を導入するようになり,当初の目的であったオペレーションのコスト低減がなされたためである。このため,一定の役割を果たしたことから,2009年9月に解散の決議を行い,同年12月に清算が結了した。21東急トランセの観光貸切バスは5台あり,うち3台は大型スーパーハイデッカーである.冬の山間地で稼働中の様子淡島営業所が運行する渋谷駅・東急東横店~東急本店間送迎バス﹁シティシャトル﹂.東急本店で現在テクニカルセンターが担当する停留所清掃業務は一時期,㈱東急バスサポートが行っていた4. エリア統括長制度5. 株式会社東急バスサポートについて

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